防災対策の考え方の新しい方向。
日経新聞 2012/03/14から引用
確かに今の防災訓練はシナリオ想定が基本になっているけど、シナリオなし訓練は実際にどうやれば運用できるか、読んだ瞬間にはイメージわきませんでした。
皆で町を歩きながら危機となる場所を議論するとかってのがまずは現実的なのかと。その際には建築とかの専門の人がいてくれるといいのかなーと思います。
――自治体の防災対策は進んでいるか。
「東日本大震災を踏まえ、各自治体とも地震や津波の被害想定を従来より厳しい条件で見直している最中だ。国は3月中に防災基本計画を改定し、福島第1原子力発電所事故を教訓にした原子力災害対策をまとめる。これを受けて各自治体は地域防災計画を来年から再来年にかけて策定し、防災対策の本格的な見直しが始まる」
シナリオ見せず
――自治体が今すぐに取り組むべきことは何か。
「例えば自治体や自治会の防災訓練は“訓練のための訓練”になってしまっている。サイレンが鳴ると同時に参加者が一斉に避難会場に集合し、到着後にみんなで初期消火の訓練をする。まずこのマンネリを改めてはどうか」
「今必要なのは参加者がシナリオを読むことができない防災訓練だ。避難場所に向かう途中で火災や建物倒壊などが次々に発生すると想定する。どの場所でどんな模擬災害が起こるか住民にあらかじめ知らせないのがコツだ。模擬災害の発生場所に遭ったら近隣の人と協力して消火や救助活動の訓練をしてもらう。試行錯誤をすることで住民の災害対応力が身に付く」
――実のある訓練をするには普段からのコミュニティーのあり方が問われる。
「隣近所の付き合いだけでなく、自治会や町内会の単位で風通しの良い顔の見える関係を築くことが大切だ。その上で災害時に一人ひとりが何ができるか、あるいは何をして欲しいかといった声を集約しておく。看護師だから応急手当てができるとか、調理師なので炊き出しは任せてほしいとか、町内会で『人材バンク』をつくる。行政はこうした活動を支援すればよい」
――ハード面の防災で必要なことは何か。
「都市部では住宅の耐震強度を高め、道路や公開空地を広く取って火災が発生しても延焼しにくくすることが課題だ。都会で増えている空き家は所有者にきちんと管理させるべきだ。建て替えを促すか、管理が不十分な物件は自治体が取得できないか。空地にし、防災やまちづくりの拠点として活用した方がよい」人の交流が力に
――高齢者の比率が高い過疎地の防災対策はどう取り組むべきか。
「過疎地の高齢者に市街地への転居を促すことは現実的でない。災害発生時に高齢者を孤立させないことが重要だ。2004年の新潟県中越地震での出来事が参考になる。被害が大きかった十日町市の小さな集落にボランティアが多数訪れ、お年寄りの身の回りの世話や農作業を手伝い、集落の存続につなげた。今もボランティアとの交流は続いており、お年寄りや地域を元気づけている」
――東日本大震災ではボランティアが延べ約93万人参加した。
「ボランティアは若者が多かった。被災者支援の活動をして見識を高めた若者が自分の住む町に戻り、地域との関わりを深めることを期待したい。被災地での交流体験が各地の防災訓練やまちづくりに役立つはずだ。根本的にはこうした人と人のつながりが地域の防災力を高めるカギを握る」
(聞き手は大岩佐和子)なかばやし・いつき 明治大の政治経済学研究科・危機管理研究センターの特任教授。専門は都市防災学。1976年の山形県酒田市の酒田大火で防災の研究を始める。日本災害復興学会の副会長を務め、都市計画学会や建築学会などで震災復興支援に携わる。64歳
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